大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和29年(う)178号 判決

記録及び証拠により本件の情状を調査するに、所論指摘の各証拠によれば、被告人が所持した覚せい剤は原判示第一の二百四十四本を含め千本位であり、かつ右所持及び判示第二の覚せい剤の販売が営利目的の所為であることは一応認めることができるけれど、本件において検察官が起訴状に訴因として掲げ原審が認定した事実は、右所持にかかる覚せい剤千本位中の二百四十四本の所持はいずれも営利目的のない所持及び販売行為であつて、被告人が所持した覚せい剤が千本位である事実並びに所持及び販売が営利目的の行為である事実は検察官も起訴状に訴因として記載せず従つて原審もまた犯罪事実として認定せず、本件においては審判の対象にならなかつたものである。

けだし、被告人の所持にかかる覚せい剤の数量が千本位であることは起訴状記載のそれより著しく多量となつていることであり、また覚せい剤取締法第四十一条第四項は、同条第一項の営利目的のない覚せい剤の所持又は譲渡とは別に右目的のあるそれらについて加重された刑を定めた罪を規定しているのであるから、これらの点につき訴因変更の手続がとられていない以上、裁判所は被告人が所持した覚せい剤が千本位であること、所持及び販売が営利目的の所為であることを認定することはできないことは明らかである。このように、審判の対象とならなかつた犯罪事実については、一応の有罪の心証が得られたとしても、これを有罪と断じ全面的に被告人のため不利益な犯情として刑の量定に参酌することは許されないものというべきである。また所論のように被告人が覚せい剤の所持又は販売の常習者であること、被告人が販売した覚せい剤は原判示の二十本以上であることは所論指摘の各証拠によつても認めることはできないし、被告人の前科及びヒロポン禍の一掃が急務であるとの所論を考慮に容れても原審の科刑(罰金二万円)は相当であつて所論のように科刑軽きにすぎるものということはできない。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 中兼謙吉 裁判官 岡本二郎 裁判官 兼築義春)

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